第4回 ヨエコスキーさん(東方手書き作者)

【よえこすきー】
東方手書き作者。愛媛県在住。
2009年1月28日、『てゐの赤い靴』でニコニコデビュー。
名前のとおり、音楽家倉橋ヨエコの大ファンを自称しており、氏の楽曲を中心にした東方×音楽PV動画を主に制作している。代表作に『沈めるチルノ』『妖夢の手作りあんどーなつ』など。
また短編漫画動画である『東方腐り豆』シリーズなども執筆。
最近では同人活動にも意欲的で、サークル:倉橋書院を立ち上げ、地方のイベントを中心に多くの同人即売会に参加している。
可愛らしいデフォルメ絵に定評があり、自身も可愛いものが好き。
サイト:ADAVA! niconico pixiv twitter

あぁ、妖夢のお爺ちゃんになりたいなぁと思って(笑)。

──それでは、よろしくお願いします。

ヨエコスキー:よろしくお願いしますー。


──いや、それにしてもここ数日、本当にお疲れ様でした。

ヨエコスキー:あ、ありがとうございます(笑)。中四国東方祭*1に出す原稿を描いてたんですけど、ギリギリになっちゃって(笑)。


──ヨエさんは、四国在住なんですよね?

ヨエコスキー:はい。生まれも育ちも愛媛県で。箱庭のようなところで生活をしていました。何にもないところですよ。ニコ生でも、「間に関税がある」とか「浮遊大陸」とか色々言われてますけど(笑)、まぁ仕方ないかなって思ってます。

みょんな漫画道


──漫画や絵はいつ頃始められたんですか?
ヨエコスキー:勉強を始めたのは大学生からですね。落書き程度ですけど、中学の頃からは少し描いていて。でも高校の頃は、周りがそんな感じじゃなかったのであんまり描かなかったですね。


──それすごいわかります。オタクが浮く雰囲気なんですよね。
ヨエコスキー:あぁそうですね(笑)。で、大学入ったら漫画研究部に入って。地方のほんとにFランク大の漫研なんで、そんなにレベルは高くないですけど、楽しく過ごさせて頂きました。私がいたころは25人くらいだったんですけど、卒業してから部員が大量に入ったらしくて、いま50人くらいになってるそうです。


──ヨエさんは漫画家の方のアシスタントをされているんですよね?

ヨエコスキー:あぁはい。あんまり大きな声では言えないですけど(苦笑)。個人的に、アシスタントというほど凄いことをしているわけでもなく……単に仕上げの作業を手伝わせてもらってるだけなので…自分ではお手伝いさんと言ってます(笑)。


──いつ頃からされてるんですか?
ヨエコスキー:大学卒業してからですから、もう一年と半年になりますね。


──アシスタントをされているということは、いずれは単独で商業作品も?
ヨエコスキー:そうですね。できたらいいな〜と思ってる時期です。最初にアシスタントを始めたころは、プロになるぞ!と考えてたんですけど、そういう仕事をさせてもらって、色々と業界の話を聞かせてもらうと、段々不安の方が大きくなってしまって。やっていけるのかな、と今少し微妙な気持になってますね。とは言え夢のある仕事ですから。そろそろ覚悟を決めないといけない時期かもしれないですね…。


──ヨエさんは漫画とかも凄く読まれてますよね。
ヨエコスキー:いや、げんきゅーさんほどじゃないですよ。


──えぇ!? 私の何を知っているんですか(笑)。
ヨエコスキー:(笑)。いやいや、あの、ブログの記事とかを見たんですよ。なかなか参考になりました。


──ありがとうございます。私もヨエさんのtwitterでの感想とか楽しみにしてるので、恐縮です(笑)
ヨエコスキー:こちらこそありがとうございます。最近はあんまり読めていないんですけどね。読むときはガーッと読むんですけど。なかなかなかなかですね〜。


──どういう漫画がお好きですか?
ヨエコスキー:本当に雑食で何でも読むんですけど、私自身の傾向としてマイナー趣味ってのがあって。他の誰も読まないような、普通の漫画好きな人の会話の中では出ないような本を読むのが好きなんです。メジャーにはない描き方ですとか、そういうのがいっぱいあるので、そういうのが好きですね。


──それすごいわかります!
ヨエコスキー:古本屋ですとかで、100円コーナーとかで端にあるような本を適当にめくって、時々凄い漫画があって、脳天から足の先まで電流が走ることがあるんですよ。あの感覚は忘れられないですね。


──最近特にお気に入りの漫画とかありますか?
ヨエコスキー:最近はですね…女性誌のほうで連載されてる『午前3時の無法地帯』*2という漫画があって。仕事に恋愛に振り回される主人公なんですけど、最後はハッピーエンドで。良い感じの漫画でしたね。

あとは、山本直樹*3さんの漫画ですね。このごろのだと、『堀田』っていう漫画が良かったです。凄く痛い話ばっかりなんですけど、人物の描き方っていうのがみんな空っぽなんですよね。見てて凄い微妙な心境になるんですけど、エロティックな話が多いのに目が離せないと言うか。映画みたいな感じですかね。日本の昔からある雰囲気映画というか、ノスタルジックさを大事にした映画って昔から多いですけど、それを漫画にしたような感じでしたね。


──漫画を描き始めたキッカケとなった作品ってありましたか?
ヨエコスキー:うーん、大学に入ったばかりの頃ははあんまり漫画について考えて無かったですね。ただ、周りの人たちが描くのが少年誌向けなのが多かったので、大人向けな作品が描きたい、人と違うのが描きたい、っていうのはなんとなくありました。そんな感じでくすぶってたんですけど、大学三年生のときに、田中ユタカ*4さんの『愛人AI-REN』と出逢いまして。


──『愛人 AI-REN』ですか! また衝撃的な出逢いを…。
ヨエコスキー:純愛モノで、最初は二人のラブラブしてる様を見てるだけなんですけど、後半になってくると死ぬこととか、愛する人を失う悲しみとか、そういうのがキまして、それで最期の愛の日記が……あ、あんまりネタバレしないほうがいいですね(笑)。一巻だけでもう涙だったんですけど、最終巻でもやっぱりボロボロ泣いちゃいました。

愛人 上―特別愛蔵版 (ジェッツコミックス)

愛人 上―特別愛蔵版 (ジェッツコミックス)

田中ユタカ氏が初めて挑んだ一般向け作品である『愛人 AI-REN』。人類が滅びかかっている終末世界。余命数ヶ月の少年と、滅びゆく人間を慰めるために造られた人造人間・愛人(あいれん)の、短く切ない、愛の物語。長く支持されている作品であり、2009年には愛蔵版も発売された。


──田中ユタカさんは今でも成人漫画でも活動されてますけど、話作りも凄くうまい人ですよね。
ヨエコスキー:はい、永遠の初体験作家と言われるほどですし。二人がいちゃいちゃしている話がすごく好みですねー。で、その『愛人』を読んで、あ、こういう話が書きたいと思って。それまでは暗ーい話ばかり描いてたんですけど、それからはできるだけ恋愛要素を前に出した漫画を描くようになりましたね。積極的に漫画も描くようになって。絵柄も段々今の方向に向かっていった感じですかね。


──pixivを始められたのは、2008年2月から始められてますけど、この頃は田中ユタカさんには出逢った後なんですか?
ヨエコスキー:たぶんそうだと思いますね。最初の頃はジョイメカファイトなんかのファミコンゲーの擬人化とか描いてました。2ちゃんのジョイメカ擬人スレでぱらぱらっと描いていたものなんですけど。それからニコニコ動画での投稿を始めるようになって、今じゃほとんど東方だけを描くようになりましたね。


──アニメは観られますか?
ヨエコスキー:かなり見てますね。今期は『荒川アンダーザブリッジ』『B型H系』『Angel Beat!』『会長はメイド様』を見ていますし。『会長はメイド様』は男勝りな主人公がすごく可愛いですねー。『デュラララ!!』は17話くらいまで見て止まってたんですけど、次からが盛り上がるところみたいなので、5、6話それまでにまとめて見なきゃなぁと思ってます。


──特に好きなアニメはありますか?
ヨエコスキー:key作品は好きですね。『リトルバスターズ!』がいつアニメ化するかドキワクしてます。でも一番好きなのは、と訊かれると『かみちゅ!』ですね。中学生の女の子がある日神様になってしまうという話なんですけど、ギャグもありますし、雰囲気がほのぼのとしていて、すごく好みなアニメです。

みょんな出逢い。


──東方を知ったきっかけは何でしたか?
ヨエコスキー:いつだったのかは定かではないですけど、ニコニコ動画ですね。会員登録なしで見れた(β)の頃からニコニコは観てて、『魔理沙は大変な物を盗んでいきました』*5が邂逅でした。その頃はどっちが魔理沙でどっちがアリスなのかわかってないくらいの知識しかなかったですけど(笑)。フラッシュだけでは世界観がわからないので、手書き劇場などの二次創作もよく見るようになって。原作をプレイするまではちょっと長かったですけど、いざプレイするとゲーム性も面白いですし、キャラクターも可愛らしいなぁと思いました。
で、こういう作品もあるのかーと思って、最初は見ているだけだったんですけど、段々手書き動画も増えてきて、音楽PVですとか、そういうのをよく見るようになって。で、思いついて、投稿しちゃいましたね(笑)。


──特にお好きな方は?

ヨエコスキー:空ビ杓さんですね。自分の中では、東方二次創作であれ以上の作品はないです。音楽も良いですし、漫画的というよりは芸術的な作品ですね。すごく胸に響いたというか、できれば自分もこういうものを作ってみたいなぁと思うようになりました。
あとは、kamSさんの作品も大好きで、週に一度は全部見ちゃいますね。kamSさんも尖ってて、突き刺さるような感じの作品です。



──儚月抄ネタが多いのが面白いですよね。
ヨエコスキー:自分でしかできない解釈とかをする方なので、見てて「あ、なるほどな」と思いますね。普通の東方動画でも、飛び抜けて芸術色の強い方で、そういうのに惚れてしまうと言うか。私にはなかなかできない作風だな〜と思いますね。


──東方以外で見ている動画とかありますか?
ヨエコスキー:兄貴動画*6とかは好きですね(笑)。あとは音MADとか。上手く音程を合わせてPVを作るっていうのも好きなんですけど、ごり押し系の音MADもすごい好きなんですよ。バトルドーム*7とか(笑)。荒削りというか、尖った発想がすごい好きなんですよね。動画を作るときには見る側のことを考えて作るべきだと思うんですけど、そういうのをふっとばして、自分がが作りたいのはこれだ!!って、それだけで完結しまっているというか、そういうのも好きですね(笑)。

みょんな誕生。


──倉橋ヨエコ*8さんを知ったのは?

ヨエコスキー:ニコニコを見始めてからですね。ワンカップ*9さんの『涙で雪は穴だらけ』『朝焼け』をMEIKOで歌ってみた、という動画がありまして。この動画、タグとかもついて無くて、元は一体誰が歌ってたんだろう、と思って調べてみたのがきっかけですね。すぐにファンになりました。


──倉橋さんの楽曲ではどれがお好きですか?
ヨエコスキー:う〜ん、どれもいいんですけど、『楯』と『涙で雪は穴だらけ』ですかね。すごく染みる曲です。暗い曲ばかりなんですけど、東方でPVをするんなら、明るい作品にしたいっていうのがあって、今のところすべての作品はハッピーエンドにしてますね。


──ところで、ヨエコスキーというHNはどこから来たんでしょうか?
ヨエコスキー:『パチュリーも雨』のときに、私のことをヨエコスキーさん、とコメントされてる人がいて。アダムスキーみたいでちょっとかっこいいじゃん!と思って、そこから取らせていただきました。


──倉橋ヨエコさんが廃業された現在、ヨエコの名前を冠して活動を続けられているのは、胸にくるものがあります。
ヨエコスキー:いや、さすがにそれは言い過ぎですけど(笑)。音楽と絵って近いところがあると思うんですけど、作る人によって全然違う物になると思うんですよ。百人が同じテーマについて作品を作ろうと思っても、それぞれ百通りの物ができる。で、私は倉橋ヨエコさんの名を継げるほど近いものは作ってないと思います。単に好きだからこういう名前にしてますし(笑)。でも、みんながみんな違うから面白いと思うので、自分にしかできないことをしようと思ってますね。


──動画を制作するにあたって、苦労するところとかありますか?
ヨエコスキー:取りかかるまで、ですね。動画を作ろう!と思って、絵を描くまでに頭の中で色々考えるんですけど。ここの歌詞のところで、こういうカットを持ってくる、みたいなことを考えるんですけど、なかなか上手く形にならないですよね。描きだしてからはけっこう上手く行くようになるんですけど。歌詞を自分の中で上手いこと分解できなかったりして、形にするまでが凄いキツイですね。


──絵コンテとかは作られるんですか?
ヨエコスキー:作るときと作らないときがあります。『パチュリーも雨』『沈めるチルノ』は絵コンテなしですね。『ママナズ』ですとかは絵コンテを描いたんですけど、実際に制作し始めたらほとんど無視しました。イメージを固めるのには絵コンテは必要ですけど、実際描いてみるとなんか違うなーと思ったりして。


──漫画でも、ネームと実際に描いてみると違ってきたりしますか?
ヨエコスキー:やっぱりそういうのはありますけど、漫画の場合はあんまり変えないですね。コマ割とか構図をいったん決めてしまうと、自分の中であまり動かなくなるので。ニコニコ動画の場合は画面の大きさが決まってるので、自由に変えられるんですけど、漫画は縦長だったり外枠があったりなかったり、複雑なのでいったん形にすると変更するのが面倒くさいんですよね(笑)。


──いったん空間を組み込んじゃうとなかなか動かないんですね。
ヨエコスキー:そうですね。漫画と比べたら、やっぱり紙芝居動画の方が作りやすいとは思います。私の場合は音楽っていうイメージを固めるものが最初にあるので、動画の方がやっぱり作りやすいですね。



──ヨエさんの作風で特徴的なのといえば「おまんじゅう顔」ですが、あれは最初からあった画風ではないんですよね。
ヨエコスキー:そうですね、自分なりに色々考えた結果ですね。動画でも最初の作品の頃からデフォルメは利かせた絵柄にしたんですけど、あんま可愛くないなぁと。どうせ簡単にデフォルメを利かせて描くんなら、可愛く描けるんじゃないかなぁと思いまして。そこから段々顔が横に広がっていって(笑)、今の絵柄になりましたね。


──『てゐの赤い靴』時点ではまだ「おまんじゅう顔」は成立してないんですね。
ヨエコスキー:してないですね。おまんじゅう顔を意識して描き始めたのは、『レミリアの卵とじ』あたりからですね。『ママナズ』になると更に平たくなってますし、どんどんおまんじゅう化が進行してますね。


──本来の作風にも影響はありますか?
ヨエコスキー:そうですね。大学のころはそんなにデフォルメもなかったんですけど、段々可愛らしさを意識するようになって、全体的な絵柄が、リアル絵もデフォルメ絵も簡単に可愛い絵を描けるようになってきてます。あのおまんじゅう顔も凄く描きやすくて良いですね。


──色合いも段々変わってきてますよね。
そもそも淡い色合いが好きだったんですけど、段々色がキツくなってきた感じはしますね。カラーパレットを作り直したりとかはしてます。


──細かい質問なんですけど、ヨエさんの作品の劇中に出てくる本って毎回タイトルがおかしなことになってますよね。
ヨエコスキー:あぁはい(笑)。ジョークの利いたものって好きなんですけど、私が描くものってどうしてもギャグはおとなしめになってしまうので、小物にアクセントを利かせるっていうのは結構ギャグとして効果的じゃないかな、と思って。
最初は、『沈めるチルノ』の『ベルセルク*10』と『キーチ!*11』でしたね。あれは私自身が大好きな作品だったんですけど、もしチルノが読んでいたら、たぶん10分の1も面白さを理解していないだろうなと思って(笑)、面白いなと思って描きました。アリスのハーレクインは、単純に読んでそうだなと思って持たせてます(笑)。『パチュリーも雨』で、パチュリーが本を机にしいて寝るシーンがありますけど、そこは『三角関係カタログ』っていうBLの本で。


──あれ実際にある本なんですよね(笑)。
ヨエコスキー:これもパチュリーがなんとなく好きそうだな、と思って(笑)。直接的ではないですけど、そういう臭わせる感じのギャグが好きですね。


──制作した動画の中で一番のお気に入りはありますか?
ヨエコスキー:『沈めるチルノ』ですね。チルノってすごく扱いやすいんですよね。ストーリーと舞台設定を用意したら勝手に動いてくれるとかあるので、キャラクター性にすごく助けられてますし、個人的にも好きなキャラクターですし。その中でも『沈めるチルノ』は自分の描きたいものが描けたかなーと思います。


──基本的にヨエさんの作品はハッピーエンドなモノが多いですが『パルスィやめても』はその中でも少し変わっていて、ちょっぴりゾクッする終わり方になっていますよね。
ヨエコスキー:あれも自分の中で全然上手くいかなくて、泣く泣く二番を切ったというのがあるんですけど、まぁパルスィが幸せそうならいいかな、と。


──あんなに幸せそうなパルスィは二次創作でもなかなかいないですよね。
ヨエコスキー:むしろさとりの方が黒いですからね。心が読めるというキャラクターなので、そういう黒い部分があっても良いかなと思って、ああいう感じになりました。


──オリジナル作品は公開されないんですか?
ヨエコスキー:あー結構あったりはするんですけど、一応私はヨエコスキーですから。みんなの目があるところでそういうのを出すのもどうかな、と。あんまりイメージを混同されたくないっていうのがあるんですよね。もし投稿することになっても、別名義でアカウント取得するとか、そういう感じになるかもしれないですね。

という発言をされていたが、このインタビューの後、ニコ生でのやりとりがキッカケとなって、大学時代に執筆された短編漫画がpixivにて公開された。
今後もこのようなオリジナル作品が公開される機会があるのか、期待したいところだ。

黒歴史漫画 女の子の気持ち | ヨエコスキー@持田 [pixiv] http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=12021883

みょんな生放送


──ヨエさんはニコ生*12を精力的にされてますよね。

ヨエコスキー:そうですね、2009年の10月7日からですから、もう8ヶ月ですか。


──東方界隈でも、かなり頻繁にニコ生されてる方ですよね。

ヨエコスキー:いやいや、暇なだけです(笑)。


──私もヨエさんの生はよく拝見するんですが、結構銀河さん*13の生と被ってるときがあって、悩むことがよくあります(笑)。

ヨエコスキー:あはははは。いやーでも銀河さんは面白い方ですよね、独特の雰囲気の生で。


──安定してますよね。

ヨエコスキー:私はムラがあるので見習いたいです(笑)。


──ヨエさんの生は、コメントの存在感が大きいですよね。
ヨエコスキー:そうですね、ほっといても勝手に盛り上がりますし(笑)。かなり助けられてます。生放送って私が発信者で、皆さんがコメントをするじゃないですか。そういう風に盛り上がってくれるのもあって、コメントってある程度自分の中で流せるんですよ。一対一でチャットをしてるわけじゃないので、個人的にやりやすいというか、作業が煮詰まることもないんですよね。私って、同時に二つことができない性分で、通話しながら作業とかできないんです。損な性格なんですけどね。


──ニコ生の内容は原稿放送が多いですよね。
ヨエコスキー:そうですね。落書きとかpixivにあげる絵なんかを描いたりもするんですけど、最近は原稿が主でしたね。


──最近はデジタルだけでなく、アナログでの配信も始められました。
ヨエコスキー:大体、私は漫画っていうのはアナログの線が大好きなんです。なので今回の原稿はペン入れまではアナログで、それ以外のトーンですとか表紙ですとかは、デジタルで作業しましたね。

みょんな同人


──同人を始められたのも昨年からですけど、始められてからは、すごく精力的にイベントに参加されてますよね。
ヨエコスキー:やっぱり愛媛で参加して、もの凄く面白かったんですよね。色んな人に来て頂いて、作品読みましたよーとか、頑張ってくださいーと面を向かって言われるのが凄く嬉しくて。それでもっと言われたいなーと思って(笑)、色々参加するようになりましたね。


──やっぱり同人の醍醐味ってそういうところですよね。
ヨエコスキー:同人そのものをずっとやってみたかったんですよね。大学を卒業していざ自由になって、何か新しいことを始めたくて、同人がちょうどできる環境だったので、やってみよう、と。毎回勉強ですけど、本当楽しい経験ですね。


──今年は中四国東方祭に出られて、紅楼夢*14には?
ヨエコスキー:行きたいですねー。大阪はそんなにお金かからないので。でも夏コミはなかなか出れないですね…東京に行くのはハードルが高いです。地方に住んでいるので関東の大きなイベントには行けないですけど、地方では小さいイベントに気軽に顔を出せるので、地方に住んでいる強みを生かして活動したいですね。


──私も委託販売でヨエさんの本を読んでみたかったんですけど、あっと言う間に売り切れてしまってて隙がありませんでした(笑)。購入できた人が羨ましいです。
ヨエコスキー:いや〜そんなに面白くないですよ? まだまだですよ私なんて。上には上がいらっしゃるので、その人たちに追いつきたいなぁという気持ちはすごいありますね。もっと漫画が上手いと、本も売れますし(笑)、もっと多くの人に手にとってもらえるので。


──自画像にも変遷がありましたが、あれはどういう感じだったんですか?
最初のバーバパパみたいなのは大学時代に作ったものなんですよ。描きやすくて良かったんですけど、例大祭のレポート漫画描いてるときに、「もっとなんかあるやろ」と思って(笑)。私って絵の感じから結構女性に間違われるんですけど、それが結構心地良いんですよね。で、レポート漫画を描くときに、自分を田舎っぽい女の子にしたらウケいいかなぁと思ってやったんですけど。あのキャラはそもそも看板娘として前からできていて、どうせならこの娘でやろうと思って。みんなあんな気持ち悪いキャラクターより、女の子が良いかなぁと(笑)。



──それでは、一番重要な質問を。妖夢はいつからお孫なんですか?
ヨエコスキー:あぁ〜〜〜……(深い溜息)。……そうですね……。妖夢というキャラクターは元々好きだったんですけど……あぁ、お爺ちゃんになりたいなぁと思って(笑)。嫁っていうより、孫って感じですよね。前からそんなふうに思ってたんですけど、あんまり外に出す機会がなくて。まだそんなに妖夢も描いていなかったので、いきなりお孫発言したら「何こいつ」って思われるんじゃないかと思って(笑)。でも、『妖夢の手作りアンドーナツ』を作って、それを機に公言するようになりましたね。


──自分の中ではずっとお孫だったんですね。
ヨエコスキー:自分が好きなキャラが上手く描けないと自分でも腹がたつんですよね。なので形にできないと嫌だなと思って、上手く描けるようになるまでずっと自分の中にしまっていました(笑)。


──妖夢の魅力は何処ですか?
ヨエコスキー:えぇ〜〜〜っ!!? そんなこと訊いちゃいますか!?(絶句) そうですね……原作をプレイしていて、真面目なキャラクターなところもポイント高いんですけど、私、昔から「銀髪」「パッツン」「刀を持っている」キャラクターに弱かったんですよ。それでドストライクでしたねー。今まで別個の属性だったのが、一気に来ました(笑)。


──妖夢はお孫で……玄孫(やしゃご)はメディスンなんですよね。
ヨエコスキー:今度の夏コミで企画*15がありまして、私も大手さんに混じって参加したんですけど、私以外にメディスンを描いている人がいなかったんですよ。メディスンはずっと描いてみようと思いながらも後回しにしてきたキャラだったので、これを機に描いてみたんですけど、すごい愛着が生まれてしまって。可愛らしいキャラクターですし、原作を見返すとけっこう悲劇的な部分がありますし。そういうところを昇華させてあげたいと言うか。幸せにしてあげたいっていう感じですかね。

みょみょんぱ娘


── 一時期はドドンパ節リスペクト*16がブームになりましたよね。ツナマヨ*17さんと空ノ雨雲*18さんの同時投稿で火がついた感じがします。
ヨエコスキー:はい、ありがたいことです。ソラノさんには一時期は再生数を抜かれて、ちょっとパルいなぁとは思ってたんですけど(笑)、でも本当に良い物を見させていただきましたね。


──どの作品も飽きないのが凄いですよね。
ヨエコスキー:そうですね、動画自体が短いっていうのと、キャラクターのかわいらしさっていうのが出しやすい動画だったんではないかなと思いますね。このシリーズで動画を初投稿されたかたもいらっしゃって、良いキッカケになったなら良いなあと思いますね。



──ブームも長く続いて、後の方には銀河さんや洗濯船*19さんと言った、普段こういう企画ではあまり見かけない方も参加されて話題になりましたね。
ヨエコスキー:そのお二方が一番衝撃的でしたね。洗濯船さんのを見たときは眠気が一気に吹き飛びました(笑)。私自身も洗濯船さんの作品は大好きなので。銀河さんはマトリョーシカに度肝を抜かれましたね。椛は最期まで憎たらしかったですけど(笑)。
リスペクトをされるといつも思うんですけど、私の絵柄をまねるのではなくて、自分の絵柄でやってみてほしいんですよね。凄く申し訳ない気持になるんですけど。それと、できればリスペクトっていう形ではなくて、新しいモノを作ってほしいっていうのがありますね。今あげた4人の方もそうですけど、自分の絵柄で描いて、自分の色を出し切った作品がたくさん投稿されて、本当に嬉しかったですね。


──先ほど話に出たkamSさんも、ドドンパ節を動画内でリスペクトされましたよね。
火宅なる世に』の中では色んなリスペクトがあるんですよね。動画の序盤で、そういうのがちらほら見えかけたときに、あーこの中に自分の作品も入ってるといいのにな〜と思った瞬間に雲山がドドンパしだして(笑)。びっくりして「うわー!!!」って声あげちゃいました(笑)。感謝してもしきれないです。

みょんなヨエ六さん。


──ヨエさんと言えばもう一つの隠れた魅力が緊縛絵ですが、どういうキッカケがあったんでしょうか?
ヨエコスキー:絵の練習がしたかったんですよね。で、絵の練習をするには、えっちな絵も避けては通れない、と。普通にえっちな絵を描いても面白くないなーと思って、何描こうか悩んでたんです。で、東京の神保町に行ったときに、何故か買ってしまった緊縛の写真集があったんですね。資料用に買いはしたんですけど実際使う機会はあまりないよなぁと思って、どうせならこれを参考にして描こう!と緊縛を描いたらえらいことになってしまって(笑)。今じゃ開き直ってますけど、練習になりましたねー。


──ニコ生で作業されたんですよね。
ヨエコスキー:R-18カテゴリで描くのもどうなのかなーとは思ったんですが(笑)、やってみたら予想以上に大きな反響をもらえましたね。緊縛本の合同誌を企画していて、結構ノってくださる方もいらっしゃるので、紅楼夢で出せるように頑張りたいと思います。特にlilish*20さんは最近仲良くしていただいていて、自分の中で緊縛の先駆けになった方なので、参加して頂きたいところですね。もうR-18で参加申し込みしてるので、後には引けないです!

みょんなこれから。


──動画の次回作は決まっていたりしますか?
ヨエコスキー:はい、まずは倉橋ヨエコの曲で一つ。あと、幻想入り動画*21を考えてます。風当たりの強いジャンルですけど。連作という形を取りますけど、一つ一つを完結に区切って、短い動画で繋げていくと割とやりやすいんじゃないかと考えてますね。


──幻想入りするのは、やはり既存のキャラクターですか?
ヨエコスキー:いえ、オリジナルキャラクターですね。敷居が高いですけど。どの動画でも言えることですけど、幻想入り動画が好きな人は、やはり東方のキャラクターを見たいと思うんですよ。オリジナルキャラをなるべく無個性にして、東方のキャラクターを前に出すようにすれば、みんなも見やすいんじゃないかと思ってます。あんまり主張しすぎないキャラクターを考えてますね。


──今後の予定は?
ヨエコスキー:色んなことがしてみたいですね。今はイラストですとか、ニコニコでは紙芝居動画を作っていますけど、もっと動きのあるFLASH作品ですとか、キャラクターが動く動画を作りたいなぁと思ってますね。アニメーションもそうですね。是乃*22さんとか、ニコニコでアニメーションを積極的に制作されてる方もいらっしゃるので、それを見習いつつも、自分にとって新しいことをやってみたいですね。もっと面白い動画を作って、色んな人に見て頂けたらと思います。


──楽しみにしております。それでは、これから創作をしようと思っている方に、メッセージをお願いします。
ヨエコスキー:初めてっていうのはすごく緊張しますし、自分の考えた物が多くの人に受け入れられるかって不安はあると思うんです。でも、やっぱりやってみなきゃわからないですから。尻込みせず、もっとアクティブに色んなことに挑戦していってください!


──ありがとうございます! 本日はお疲れ様でした!
ヨエコスキー:ありがとうございました!!


(2010年6月24日収録)
(文責:げんきゅー)


次回予告

次回は夏休み特別企画! 『ふゆのひまわり』『Red Night Girls』などで知られる、村上さんが登場予定!お楽しみに!

*1:中国・四国地方で行われる東方オンリー同人即売会。2010年7月に第一回が開催され、会場では名物である讃岐うどんになぞらえて、永遠亭のうどんなども販売された。第二回は2011年の6月頃に開催予定

*2:フィールヤング連載。全3巻。作者はねむようこイラストレーターを志望する主人公が、理想と違うハードな仕事や恋愛に振り回されながらも、新たな日常を生きていく姿を描いた作品。初単行本ながら評価の高い作品であり、最近では続編となる『午前3時の危険地帯』の第1巻が刊行された。

*3:漫画家。主な作品に『blue』『ありがとう』など。過激な性描写を軸にした、シニカルな作品で知られる。現在はイブニングにて、連合赤軍事件をテーマにした青春群像劇『RED』を隔週連載中

*4:漫画家。代表作に『ミミア姫』『いとしのかな』など。男女二人が幸せに愛し合う作品を多く描いており、『永遠の初体験作家』という呼び名を持つ。成年誌での活動が多いが、最近では一般誌でも作品を多く発表している

*5:同人サークル:IOSYSの東方アレンジ楽曲。ボーカルは藤咲かりん(現:miko)氏。ニコニコ動画においては、カギ氏が制作したFlashPVが早い段階にUPされ、その中毒性から爆発的な再生数を記録した。東方を知らなくてもこのPVは見たことあるという人は多く、ここから東方を知っていったという人も少なくない

*6:屈強な男達がお互いのパンツを奪い合う至高の格闘技を映した動画のこと。詳しくはレスリングシリーズなどでタグ検索がオススメ(検索は自己責任でお願いします)

*7:ツクダオリジナルから発売された2〜4人向けの玩具。多くのボールを相手のゴールにめがけてシュゥゥゥゥーッ!するドーム型の対戦玩具であり、ニコニコ動画においては印象的なCMを素材に用いた音MADが多数制作されている。詳しくはツクダロイドなどでのタグ検索がオススメ

*8:楽家。アルバムに『婦人用』『ただいま』など。「ジャズ歌謡」「ヤサグレロック」などど自ら呼ぶ、ハイテンションな曲調でありながら、女性の執念や悲哀を感じさせる歌詞を綴った楽曲を多く歌っており、そのギャップの強い音楽性からファンからはポガティブなどと称されることも。女性を中心に共感を集めていたが、2008年に突然の廃業宣言を発表。同年の全国ツアーを最後に宣言通り、音楽活動を終了した

*9:vocaloidプロデューサー。代表作に『もっと歌わせて2107』『子猫のパヤパヤ』など。オリジナル曲の他、名曲のカバーなども行っている、vocaloidのPの中でも最初期から活動している人物の一人。伝説のMEIKOマスターの異名を持つほか、vocaloidを用いて楽曲を制作している人の中で、初めて○○Pと名付けられた人物としても知られている

*10:ヤングアニマルにて連載中。作者は三浦健太郎。身の丈を超える巨大な剣を用いる主人公・ガッツの冒険を描くダークファンタジー。壮大かつ緻密な世界観で知られており、20年以上の連載を続けた現在も拡大の一途を辿っている

*11:ビックコミックスペリオールで連載。作者は新井英樹。海育ちの母と山育ちの父の元に生まれた染谷輝一。幼稚園時代から始まる彼と、周囲の人々の数奇な運命を描く物語。現在は大人編となる『キーチVS』が同誌にて連載中

*12:正式名称はニコニコ生放送ニコニコ動画を運営するニワンゴが提供しているライブ配信サービス。ニコニコ動画を再現した画面上を流れるコメント、30分ごとに一枠が終了するシステムなど、他のライブ配信サービスとは異なる独特の仕様が特徴。東方二次創作作者にも、このサービスで作業配信などを行っている人は多い

*13:東方手書き作者。フルネームはボディ・マハッタヤ・銀河。代表作に『東方三ボス同盟』『東方資本主義』など。様々なパロディや小ネタが挿入された、秀逸なストーリー構成を得意とする。イラストレーターとしても活動しており、2010年には商業誌で漫画デビューもしている

*14:大阪で開催される東方オンリー同人即売会。東方オンリーイベントにおいては、東の例大祭、西の紅楼夢と称されることもある、大規模なイベントである

*15:オレンジゼリー氏が主催している企画、『東方トレーディングカード「彩−aya−」』のこと。くわしくはこちら→http://d.tank.jp/aya/

*16:ヨエコスキーさんが投稿した『チルノのドドンパ節』から始まったリスペクト祭。中毒性の高い動画内容に共感した絵師たちが、様々なキャラクターのドドンパ節を投稿するという一大イベントへと発展した。比較的制作しやすい動画内容もあり、このリスペクト祭がきっかけで動画投稿者デビューを果たした人も多い。詳しくはドドンパ節東方ドドンパ娘などでタグ検索するのがオススメ

*17:東方手書き作者。代表作に『タミフルリバー三姉妹』『それいけ!早苗さん』など。ハイテンションなギャグを得意としており、一度見たら決して忘れない「ぺかー顔」の求道者でもある

*18:東方手書き作者。代表作に『東方日記』シリーズなど。喋らない霊夢を主人公においた、ほんわかのほほんとしたコメディ作品を主に描いている

*19:東方手書き作者。代表作に『古明地こいしのドキドキ大冒険』など。グロテスクな描写とあらん限りの狂気を描き、先の読めないシリアスなストーリーを展開する手書き作者。他の追従を許さないその世界は、多くの視聴者を魅了する

*20:東方手書き作者。代表作に、『基本的にむちましい感じの東方劇場』など。ヨエコスキーさんと仲良しであり、ニコ生にもよくコメントされている。緊縛をこよなく愛しており、ヨエコスキーさんとはめーさくカンパニー緊縛部の部長と係長の関係

*21:ニコニコ動画における、東方二次創作の一ジャンル。外界から人や物が幻想郷に迷い込むことがある、という設定を反映したジャンルであり、既存の作品のキャラクターと東方のコラボ作品が多くを占めている

*22:東方手書き作者。代表作に、『あばれいむ』『霊夢とさくらの季節』など。手書きアニメを制作している一方、ドS度の高いR-18絵を描いたり、かと思えばハートフルな作品を執筆したりと、作風の幅広さで知られている。東方手書き作者の間でよく爆発させられていることでも有名