東方見聞録まえがき。


東方project』という作品をご存じでしょうか。同人サークル・上海アリス幻楽団を主催するZUN氏が、ほぼ個人で制作している同人シューティングゲームのことです。今年発売された『ダブルスポイラー 〜東方文花帖』で通算12.5作目となるこのシリーズは、神話や伝承を題材にした重厚な設定、美しい音楽群、やりこみ度の高いゲーム内容などから数多くのファンが存在します。
ZUN氏が二次創作を容認していることもあり、同人界隈でも東方projectの人気は高く、現在では全国各地で、ほぼ毎週何らかのイベントが開催されているほど、東方の世界は規模を拡大し続けています。
これほどに同人で人気を博する理由。その最たるものは、東方の世界の大部分が、ユーザー一人一人の想像にゆだねられている、という点でしょう。
東方に登場する幽霊・妖怪・神々の少女達や、舞台となる幻想郷は、ユーザーの空想の余地を残すため、わざと多くは語られていないことが多いのです。
そのため、二次創作の題材として親和性が高く、作り手ひとりひとりの内面が色濃く反映された百花繚乱の世界が紡がれています。
漫画、絵、小説、音楽、フィギュア、ゲーム…物語だけに限定するなら、ハートフルなものから際どいギャグ、感動できる作品や見てるだけで心が折れそうな重い話、恋愛、バトル、スポーツ、サスペンス、ほのぼの…。
これは私見ですが、東方の世界は、あらゆる方向性のクリエイターが同じ土俵で作品を発信できる、共通ツールであると言えるのかもしれません。それ故に、まったくベクトルの異なる才能が、一同に介して存在することができる。無限に続くこの幻想の世界は、見る人見る人に尽きることのない新鮮さをもたらしてくれます。


この東方の二次創作の作り手の方々から、色々とお話を伺ってみたい。
そんな風に思いついたのが、この企画のスタートでした。
近年は同人クリエイターに対するインタビューの機会も増えているものの、メディアにとっては制約がやはり多いのか、オリジナルや商業を発表した人にスポットが当てられることがほとんどのように思います。
勿論、一から自分の世界を形にできることは素晴らしいことだと思うし、その過程に光が当てられるのも、私たちにとっては喜ばしいことです。
けれど、オリジナル=一次創作が素晴らしいように、二次創作だからこそ語ることの出来る創作論、作者の肉声というものも、きっとあるはず。そして、それはオリジナルや商業とまた違った意味で、私たちに知的興奮を与えてくれる。そんな風に思うんです(勿論、これは東方だけに当てはまることではなく、数多のあらゆる二次創作に言えることですが)。


このサイトでは、広い広い同人と二次創作の世界の中でも、東方というジャンルの中で輝くクリエイターの方々の、生の声を取り上げていきます。
一人一人の一次創作の愛し方。
一人一人の二次創作の作り方。
様々な可能性がひしめく、この世界で活躍する作り手の方々の言葉。
多くの人に伝えられるよう、頑張っていこうと思います。


手探りだらけの企画と相成りますが、どうかご声援のほどを、よろしくお願い致します。


東方project上海アリス幻楽団様の同人作品です。当企画は、東方projectの二次創作活動を行っている方々を対象にしたインタビュー企画であり、原作及び上海アリス幻楽団様とは一切関係ありません。

『東方見聞録』企画者 げんきゅー拝